垂直増幅部

(1)2現象表示

 2つ以上の波形を比較測定するには、多現象オシロスコープが便利です。多現象といっても通常に入力、出力波形を比較する場合のように、2つの波形を比較すればよいことが多いので、2現象のオシロスコープを例に説明します。

電子切換式2現象オシロスコープ

普通の単現象用のブラウン管を用い、交互に波形を切換えて2つの波形を出します。2つの方法があります。

■チョップ方式

 CH1、CH2の信号を高速で切換えて表示します。切換えの周波数は機種によって異なり、岩通製オシロスコープの場合には、200kHz~1MHzです。1回の掃引では1-17図のように2つの信号は点を連ねた形で描かれることになります。
 したがって、掃引時間が遅い場合には切換えが目立たず連続した波形として観測されますが、掃引時間が速い場合には切換えが目立ちます。
 電子切換式2現象オシロスコープで2つの信号を単掃引で観測する場合には、チョップ方式によらねばなりません。

1-17図

■オルタネート方式

 CH1、CH2に入った2つの信号を、掃引が一回終わるごとに切換えてブラウン管に表示します。(1-18図)
 したがって入力信号の周波数が高く、掃引時間も速ければ、2つの信号は管面で同時に観測できますが、入力信号の周波数が低い場合や、掃引時間が遅い場合は、2つの信号が交互に表示されるのが目立ってきます。
 また、単掃引の場合は、どちらか一方の信号しか表示しないことになりますので2現象の観測はできません。

1-18図 オルタネート方式の回路説明

(2)4現象表示

 ロジック回路の信号の観測が増すにつれて、2信号間の時間関係だけでなく、それ以上の信号間の時間関係を観測したいという要望が増えてきました。オシロスコープの4現象表示は、そう言った要求に応えたものです。
 これは、それまでのA、B2つの外部同期信号もCRT管面上に表示し、これを第3、4のチャネルとしたものです。このCH3、CH4は外部同期入力のときと同様に1:1と1:10の減衰器を備えています。
 岩通のオシロスコープSS-7840H、SS-7840、およびSS-7825は、新方式の4現象表示機能を搭載したものです。
 また、SS-7821、SS-7811、SS-7810は、3現象表示機能を搭載しております。

(3)BAND WIDTH

 広帯域オシロスコープには、帯域制限器BAND WIDTHが付いています。広帯域オシロスコープは低帯域のものと比べて、オシロスコープの垂直増幅器自身が発生するノイズや観測信号に含まれてるノイズにより輝線が太くなります。BAND WIDTHはローパスフィルタですので、被観測信号がBAND WIDTHのカットオフより低い周波数の場合に、これをかけると高周波ノイズ分が少なくなり、管面上ノイズの少いシャープな輝線で観測することができるようになります。

(4)ドリフト特性

 オシロスコープの垂直増幅器は、周囲温度の変化などによって、輝線が上下にゆっくり移動する温度ドリフトを最小に抑えるため、平衡型差動増幅器を用いています。岩通のオシロスコープは、使用する半導体の厳選など徹底したドリフト対策設計を行っていますので、非常に安定したトレースで測定できます。

1-19図 ドリフト実測値例