デジタル・オシロスコープ DS-8000シリーズ
各種機能
スムージング機能
上段:ノイズが重畳している信号 中断:スムージング±2点 下段:スムージング±6点 単純移動平均処理によって、波形歪みのある信号から主信号を浮き彫りにして測定できます。サンプリングデータから、ある一定区間(widthにより任意設定可)毎の平均値をずらしながら算出して表示します。
四則演算機能
例)インダクタの応答特性
上段:電圧変化(CH1)
中段:電流変化(CH3)
下段:電力変化=MATH(CH1*CH3)
四則演算機能を利用して、損失、インピーダンスなどが求められます。
また、チャンネル入力(電圧・電流)と同様にMATHにもリスケール機能が入っているので、デバイスの特性値を直読できます。
FFT機能
入力信号の周波数成分を見極めることができます。
左図の例は、上段に100ns周期の方形波信号に500ns周期信号が重畳している時間軸波形です。下段には、FFT解析によって、10MHzの奇数次の高調波1-3-5次が大きく現れており、この周波数成分の間に2MHzの信号が確認できます。
フィルタ機能
チャンネル毎に、アナログフィルタとデジタルフィルタが個別に設定可能です。
①アナログフィルタ機能(20MHz設定時)
入力アンプに帯域制限をかけて、高周波ノイズを除去します。
②③デジタルフィルタ機能(②LPF 200MHz、③HPF 35MHz 設定時)
フィルタの種類やカットオフ周波数が設定でき、デジタル信号処理にてフィルタ機能を実現します。
例では、2種類の周波数成分が重畳されている信号から1つの信号などを抽出できます。
平均化演算
左上波形はノイズの重畳波形です。右上波形ではノイズを平均化によって低減した例です。トリガをシングルにして捕捉すると、設定した平均化回数分のデータを取り込んだ後に測定を停止します。
高分解能モード(High Resolution)・拡張高分解能(Advanced High Resolution)
高分解能モード(High Resolution) 最高サンプリングより低いサンプルレートに設定した場合、最高サンプリングで捕捉したデータを平均化処理して、高分解能で表示するモードです。ランダムノイズを減衰させて、垂直分解能を実効的に上げることができます。単発信号・繰り返し信号にも利用でき、最大16bitまで対応します。 拡張高分解能(Advanced High Resolution) デジタル処理により、High Resolution よりも高分解能が得られ、ノイズを低減できます。
sin(x)/X補間
取得したサンプリング点間をsin(x)/x補間により、カーブフィッティングして補間データを作成することで、見かけ上のサンプリング速度を上げて測定するモードです。等価サンプリングとは異なり、単発信号にも使えます。
ピーク検出モード
設定したサンプリング周期の2倍の区間内に発生する最大・最小値を検出して表示するので、確実にノイズ波形などのピーク値が分かります。
上記図は、通常のサンプリング時の捕捉方法(上段)と、ピーク検出したときの捕捉方法(下段)です。
ピーク検出を設定しないと、図中の波形 データ A 点を検出できないことがあります。サンプリング周期とは無関係に400ps周期で捕捉するため、サンプリング周期内で発生した現象を確実に捕らえることができます。
ロールサンプル
波形データの表示をリアルタイムに行い、連続する波形データを画面左側から右側に自動でスクロール表示します。最大メモリ長120Mポイント利用時、5~50s/divと非常に長い時間のレベル変動を連続で見られます。図は、頻繁に発生している振幅変動を視覚的に捕らえた例です。
最速でメモリ長を1.5kポイントにして100ms/divから50s/divでロール動作します。
カーソル機能
カーソル機能は、時間(Time)、振幅(Amplitude)、Time&Amplitude、Value at cursor(カーソル点の垂直点の読み値)の4つがあります。個別にカーソルを動かしたりトラッキングして2つのカーソルを同時に動かしたりできます。図は、Time&Amplitudeカーソルでパルス測定している例です。 数値は、カーソルメニュー、水平軸、チャンネルメニューのCURSORエリアで確認できます。なお、測定画面のカーソルウインドウを消して波形に重ならないように表示もできます。
波形表示の分割表示
各チャンネルの縦軸(振幅)を独立させて波形表示することが可能です。
縦軸のフルスケール分解能を維持しながら、Y-T表示(縦軸:振幅、横軸:時間)8CHモデルで最大16段表示(CH表示8+MATH演算8)します。
例えば元波形を見ながら、積分、微分、スムージング、FFT解析を同時に観測できます。
サーチ機能
画面に表示されている区間において、最大30,000件の波形検索ができます。波形異常の位置が特定しやすので、デバッグ工数の削減にもつながります。図は、2個目の13.12ns以下のパルスを検出して、前後の波形とともに画面下段に拡大して表示しています。
測定ゲート機能
特定区間におけるパラメータ演算を各々設定できます。上図の様に、特定のタイミングにおけるパルス幅の変化を波形モニタしながら継続して確認したい場合は、各パルスに対して測定ゲートをかけることにより、それぞれのパルス幅を表示することができます。また、異なるチャンネルで異なるタイミングの信号の変化も数値で確かめられます。
デスキュー(Deskew)機能
利用するプローブによって、チャンネル間でスキュー(位相)のずれが生じる場合があります。Deskew機能でチャンネル間の時間差を補正することができます。正確な損失解析(電圧×電流)やタイミング計測に必要な機能です。数値で確かめられます。
シーケンス機能 / ヒストリー機能
シーケンス機能は、水平軸のサンプルモードをシーケンスに設定して、分割されたメモリのセグメントにデータを格納することにより、データの読出し時間を大幅に短縮できる高速トリガ機能です。図は32,768波形のうち、1番目、5番目、32,768番目の波形を捕捉して、各波形の最大値などを表示している例です。
ヒストリー機能は、サンプルモードをリアルタイムモードで特別な設定をおこなうことなく、常に動作しています。簡単に波形履歴を読み取ることができなす。最大記録数は、32,768波形(メモリ長に依存)です。過去のデータは履歴のインデックス番号を指定して表示します。
データ保存・オフライン解析
DS-8000の測定条件・測定データを保存し、後からDS-8000 Viewerを使いデータを読み出すことで、異なる条件で波形を再生し、波形データを必要な形式に変換(バイナリ→CSV形式)し保存したり、画面表示をpng形式などで保存できます。ロングメモリのデータをPC上に転送するには、USB3.0ストレージデバイスの他、PCとDS-8000の間をイーサネットもしくはUSBインタフェースを介して保存することもできます。
図は、リアクトルに流れる電流と電圧降下を測定した例です。
データを保存し、PC上で波形を読み出した状態です。オシロスコープに搭載されているノブなどをPC上にビジュアル表示するので、実際にオシロスコープを操作する感覚で解析できます。
外部トリガ機能(出荷時オプション)
AUX OUTを外部トリガ入力、オプション(出荷時に適用される工場オプション)を選択することで、外部トリガ入力に変更対応します。システム組み込みなど、外部からの制御信号のタイミングを利用した波形捕捉ができます。
プローブパワー端子
プローブの種類 | 型名 |
---|---|
FETプローブ | SFP-4A/5A※ |
高電圧差動プローブ | SS-320 |
電流プローブ | SS-240A※、SS-250※、SS-260※、SS-270※、
SS-520、SS-521、SS-530、SS-531、 SS-540、SS-550、SS-560、SS-570 |
注:※印の付いたプローブは販売終了品です。
測定パラメータ
測定種別 | 測定内容 | 単位 |
---|---|---|
Vertical(垂直軸方向) | ||
Maximum | 波形の最大値 | V |
Minimum | 波形の最小値 | |
Peak-Peak | 最大値/最小値の差 | |
Top | 波形の上部平坦部 | |
Base | 波形の下部平坦部 | |
Top-Base | Top と Base の差(振幅) | |
RMS | 波形の実効値 | |
Cycle RMS | 1 周期単位の波形の実効値 | |
Mean | 波形の平均値 | |
Cycle Mean | 1 周期単位の波形の平均値 | |
+OverShoot | 波形の立上がりにおけるオーバーシュート | % |
-OverShoot | 波形の立下がりにおけるオーバーシュート | |
Horizontal(水平軸方向) | ||
Transition Time | 波形の立上がり/立下がり時間 | s |
Tr 20~80% | 波形の20~80%の立上がり時間 | |
Tf 80~20% | 波形の80~20%の立下がり時間 | |
Tr 10~90% | 波形の10~90%の立上がり時間 | |
Tf 90~10% | 波形の90~10%の立下がり時間 | |
Tr Level | 波形の立上がり時間(検出の閾値を実数で指定) | |
Tf Level | 波形の立下がり時間(検出の閾値を実数で指定) | |
Frequency | 波形の周波数 | Hz |
Period | 波形の周期 | s |
+Pulse Count | 正のパルス数 | - |
-Pulse Count | 負のパルス数 | - |
+Pulse Width | 正のパルスの幅 | s |
-Pulse Width | 負のパルスの幅 | s |
Duty Cycle | 波形のデューティ比(正のパルス幅/周期) | % |
Other(その他) | ||
dV/dt | 波形の立上がり/立下がりエッジの傾き | V/s |
Integral | 波形の積分 | Vs |
Integral (Absolute) | 波形の絶対値の積分 | |
Integral (Positive) | 波形の正値のみの積分(負値は0 として扱う) | |
Integral(Negative) | 波形の負値のみの積分(正値は0 として扱う) | |
Skew (%) | 波形のエッジ間の時間差 (エッジ検出の閾値を%で指定) |
s |
Skew Level | 波形のエッジ間の時間差 (エッジ検出の閾値を実数で指定) |
|
Phase (%) | 波形の位相差(エッジ検出の閾値を%で指定) | Degree, Radian, % |
Phase Level | 波形の位相差(エッジ検出の閾値を実数で指定) |
DS-8000に最適なプローブ例
電圧プローブ
型番 | 帯域(MHz) | 減衰比 | 最大電圧(Vpeak) | DS-8000シリーズ終端(Ω) | DS-8000シリーズ電源接続 | プローブ用電源 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
外部電源 | 電池駆動 | |||||||
BumbleBee (差動) |
500/400 | 500:1~5:1 | ±2,000~±200 | 50 | ×非対応 | 〇 | PS-02 | 〇 AP-01 |
PS-03 | ||||||||
SS-320(差動) | 100 | 500/50:1 | ±1,400 | 1M | ○可 | ○PS-25 | ×非対応 | |
PHV2000 | 400 | 100;1 | 4,000 | 1M | ー | - | - | |
PHVS2000 | 400 | 1000;1 | 4,000 | 1M | - | - | - | |
TETRIS 1500 | 1,500 | 10:1 | ±8V | 50 | ×非対応 | ○TETRIS 標準付属 |
×非対応 | |
PML-711I-RO | 500 | 10:1 | 300(CATII) | 1M | - | - | - |
電流プローブ
型番 | 帯域 (MHz) |
感度(mV/A) | 最大電流 (Apeak) |
DS-8000 シリーズ 終端(Ω) |
DS-8000 シリーズ 電源接続 |
プローブ用電源 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
外部電源 | 電池駆動 | ||||||
ロゴスキーコイル電流プローブ | |||||||
SS-280A SS-280A-H |
30 | 200~0.2 | 30~30,000 | 1M | ×非対応 | 〇 オプション ACアダプタ |
〇 単三 乾電池 ×4本 |
SS-290 | 10/20 | 5~0.05 | 1,200~120,000 | 1M | |||
SS-620 | 10/15/20/25 | 100~0.2 | 60~30,000 | 1M | |||
SS-660 SS-660P |
30 | 100~5 | 60~1,200 | 1M | |||
SS-680 | 100 | 10~0.1 | 120~12,000 | 50 | |||
クランプ電流プローブ(ホール素子タイプ) | |||||||
SS-531 | 120 | 0.1 / 1 / 10 | 30 / 5 / 0.5 | 1M | 〇オプション変換ケーブルSS-200-IW | 〇 オプション PS-54 |
× 非対応 |
SS-521 | 120 | 1 | 5 | 〇 オプション PS-52 PS-54 |
|||
SS-550 | 100 | 0.1 | 30 | ||||
SS-560 | 10 | 0.01 | 150 | ||||
SS-570 | 2 | 0.01 | 500 | ||||
カレントトランス CTシリーズ | |||||||
58, 89シリーズ | ~30 |
0.01~1 | ~500 | 50 | - | - | - |
13シリーズ | ~60 | 0.05~1 | ~100 | 50 |
スキューキャリブレータ
瞬時のスイッチング損失を正確に測定するには、実際に測定する電圧・電流振幅にできる限り近付けて、電圧プローブと電流プローブ間の位相(スキュー)を合わせる必要があります。
スキューキャリブレータIE-1360は、電圧と電流のパルスが同時に出力される信号発生器となっており、パワーエレクトロニクス計測に用いる高電圧・大電流プローブにおいても十分な振幅で校正が出来るように、最大250V・10Aの出力が可能です。なおスキュー調整は、オシロスコープ側の機能であるデスキューを使用します。
スキューキャリブレータIE-1360に関する詳細については、こちらをクリックください。